ベル牛制作
今日は特別ゲストを交えて解説したいと思います。
ベル牛「ヤァ!ボクはベル牛!世界中で愛されているチーズのマスコットさ!今回はフィギュアになったからその制作過程を紹介するヨ!・・・なんか横のスクロールバー長くない?」
それじゃはじめましょう。
ベ「まずは材料紹介ダヨ」
●原型に使った材料
1.ファンド‥アートクレイ「ファンドSoft」90%これで作られています。造形には向かないけどやわらかいので盛りやすいです。
2.エポキシパテ‥タミヤ「エポキシ造形パテ(速攻化タイプ)」イヤリングの細かいパーツを作るのに使いました。
3.リップクリーム‥エポパテに混ぜると手につかなくなります。
4.ラッカーパテ‥タミヤラッカーパテ。ラッカー溶剤で濃度が調節できます。結構ひけちゃう。
5.ポリパテ‥完成するまでは使いませんでした。(?)
6.ラッカー系塗料‥基本的にこれのみで塗装します。
7.エナメル系塗料‥ドライブラシとスミ入れ要員
ベ「フタが無いものがチラホラ見えるけど実はマジでフタが無いんだ。ラッカー溶剤なんかは倒れているのが気がつかなくてゲームキューヴとかフアミコンを溶かしちゃってマジ泣きしてるんだよ。フタは大事だね」
●複製マテリアル
8.シリコン‥造形村 新スーパーEXシリコン
9.ブロック‥シリコンを流す型用です。変幻自在の便利なやつ。最近劣化してゆがんできました。
10.油粘土‥ほいく粘土。両面取りなので使いました。シリコン離れに定評があります。
11.離型剤‥リンレイの床ワックス。通称ブルーワックス。シリコン同士がくっつかないようにする効果があります。
12.注型剤‥いわゆるレジン。開けてから時間が経っているせいか気泡がすごかったです。
13.その他‥計量機はシリコンやレジンの量を測るのに使います。ポリ容器はシリコン撹拌用。紙コップレジン撹拌用に使用します。
●原型制作開始!
まずはファンドの塊を削りだしておおまかな形にします。
ベ「これは原型の芯になるところ。一から生のファンドで塊を作っちゃうと表面だけ乾燥して内部はぶよぶよ、なんてことになっちゃうからちょっとずつ大きくしていくのがベターなんだって。つまりこの塊は長い年月をかけて放置されていたってことになるね!」
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さらに耳や角や鼻を別の塊から切り出して接着しファンドで表面を整えます。
粘土を盛って削って盛って削って繰り返して修正しながら形を作ります。
ベ「並べて見るとどこが変わっているのかわかるかな?ここまでくるとほぼ完成が見えくるね!いつもはここらへんで満足して手が止まってそれっきりになっちゃうから気を引き締めて次の工程に着手するのがダレないためのポイントなんだよ」
●イヤリング制作編
次はイヤリングを作ります。実は最初にこのイヤリングを作るときにこのベル牛そのものがモチーフになっていると思わず↓こんなものを想像していました。
得体の知れない恐怖を感じながらベル牛を作ることの重圧を改めて実感しました。
べ「失礼な話だね。そんな邪教徒みたいなものつけてるわけないのに。そんなんだからイヤリングにイヤリングつけ忘れるんだよ」
↑イヤリングを付け忘れた状態のイヤリング。
実はこのイヤリングも3個目で前の2個は失くしてしまっています。さすがに4個目は作る気になれず、なんなら複製してしまえということになりました。これぐらいのパーツならシリコンの空き缶の底に溜まっているやつでも充分取れます。
いわゆる片面取りといわれる型を作ります。イヤリングの裏面はまっさらな状態なのでこの片面取りが最適です。プラ板の上に原型を固定して周りをブロックで囲い、マスキングテープで漏れを防ぎます。
シリコンに硬化剤を加え型に流すのですがシリコン自体に気泡が入っていることがあるので先にシリコンを原型に筆塗りします。こうして先に膜を張っておけば気泡の混ざったシリコンを流し込んでもきれいに型取りできるだろうという魂胆です。使った筆はエナメル溶剤できれいにふき取ります。
べ「途中写真がないのは作者が型取りは苦手で余裕がなかったためだそうだよ」
そしてこれが複製したものです。ちゃんとイヤリングもついています。
べ「こんなに複製する必要ないんじゃない?と思うかもしれないけどきれいに取れるものは少ないので多めに取っておく必要があるんだって。あと作者がマジで失くすから」
●原型仕上げ
いわゆる表面処理の工程です。一番時間が掛かり終わりの見えない作業です。磨いては傷を見つけ、磨いてはへこみを見つけその修正の繰り返しです。イヤリングを作っている間にも牛本体のほうも同時進行でやるのが望ましかった。
べ「傷埋めはタミヤのラッカーパテだけでやったみたい。おおかた溶きパテもなくしちゃったんだろうね」
イヤリングもつけて原型完成です。涙ボクロみたいなのはゴミがついただけです。
ベ「変なマーキングは複製するときにこの線を基準に粘土埋めをするんだ。何本も書いてるのは単に間違えたからだよ」
●複製の型作り
この複製が私の中で一番の鬼門になっています。なぜならいままで複製してきたもののほとんどが失敗してきたからです。最近ようやくなれてきて成功パターンがつかめてきました。
べ「深夜に泣きながら複製してたのもなつかしいね!」
そして作る型は漢のトップゲート両面取りです。
べ「名前には特に意味はありません」
ここで型の種類について説明します。最初にイヤリングで作った型は片面取りといって裏面がまっさらなパーツを複製するのに有効な型と説明しました。そして両面取りの型は後ろも前も複雑な形状をしたものを複製するのに有効な型です。
べ「でも俺の後ろもまっさらなんだゼ」
確かに今回のベル牛の形なら片面取りができないこともないと思います。しかし片面取りの型に必要な条件にはもうひとつ型から抜くときに返しがないことも条件に入ってきます。ベル牛の場合耳やイヤリングが返しになって型から抜けなくなってしまいます。
しかし型の種類にはもうひとつあって上の図の右パターンでも抜く方法があります。複製最大の禁じ手その名も「無理抜き」!!
べ「と、そんなことはなく普通にあります」
「無理抜き」とはシリコンの弾性を利用した技で上の図で引っかかって抜けない原因になっているところに切り込みをいれて「えいっ!」と抜いてしまう方法です。もちろん型の寿命を縮める原因になるし、失敗するリスクもあるので今回はスルーしました。
べ「型抜きもヘタだから時間はかかるけど両面取りで確実に作ろうということだね」
以上が型の種類になりますが今度は注型剤を流し込むためのルートの種類を紹介します。
今回作る漢の「トップゲート」ともうひとつ知的な「アンダーゲート」があります。
べ「なんかアンダーゲートは注型剤の路が長くて無駄だね」
確かにアンダーゲートは型もゲート部分が回りこんでしまうせいで型が大きくなってしまうし注型剤もその分多く使うことになるので無駄に感じるかもしれません。では机上の空論で注型剤を流してみましょう。
べ「なんかトップゲートはスプラッターしてるね」
ここまで極端ではないと思いますが少なからず成型時の気泡の原因になってくると思います。金属の鋳造の場合はその飛沫から冷えて固まって成型時にボコボコになってしまうことがあるみたいです。
それでも今回にトップゲートを採用したのはそこまで複雑な形ではないため気泡の心配もなく成型できると思ったからです。
べ「型も小さく作れて安上がりだからってのが一番の理由でしょ」
話が脱線事故を起こす前に本題に戻します。
両面取りの型なので先に書いておいた線にそって粘土に原型を埋めます。これはA面の型をつくるためのB面の仮の型になります。そこに片面取りと同じようにシリコンを流します。
ここまでで大体の型の仕組みはわかってもらえたかと思います。ちなみにダボとは型同士を合わせたときにズレないように噛み合わせるためのものです。
シリコンが硬化したらひっくり返して粘土を取り除くと型のA面ができています。ただそこにシリコンを流し込むとくっついてしまうので離型剤を塗ります。
今回使用した離型剤は「リンレイのブルーワックス」を使いました。これの利点は型がきれいに作れるということです。問題は塗ったところがわかりづらいことと商品の内容量が多いことでしょうか。これだけあれば十年どころか一生戦えそうです。余ったら床ワックスにどうぞ。しかし型がきれいに作れるので一発目の型抜き作業から製品に使えるぐらいのものが抜けました。
●いよいよ複製!
ここできれいに抜けるか失敗するかで天国と地獄に分かれます。
べ「時間がないときに失敗するとマジで泣くみたいだよ」
べ2「うわーキモーい!泣くのが許されるのは小学生までだよねー」
●塗装して仕上げ!
そしてここから気泡埋め→表面処理→塗装に入りますが・・・
べ「途中経過を写真に撮ってないんだって」
ここからは塗料名にラッカー系は赤。エナメル系は青と色分けします。
表面処理が終わって塗装に入ります。全体に「キャラクターホワイト(半ツヤ)」をエアブラシで塗りますがここも写真がありません。そして「キャラクターホワイト(半ツヤ)」を塗った段階で「目」「角」「イヤリング」にマスキングテープを張ります。
そしてベル牛の基本色を塗るのですが今回は市販の「ブラウン」が一発で合いました。これからこの色は「ベル牛ブラウン」と呼ぶことにします。
「ベル牛ブラウン」を塗り終わったら次は鼻先の白い部分を「キャラクターホワイト(半ツヤ)」エアブラシでぼかしながら塗装します。エアブラシを使っている気分が味わえる作業です。
べ「だそうです。写真ないとわかりにくいね」
唯一残っている途中段階の写真は口の中を塗装している写真です。「レッド」に「ブラック」を混ぜて塗装しました。
次はイヤリングの塗装です。これはベースをラッカーの「キャラクターホワイト(半ツヤ)」を塗った状態です。
べ「なにこれ?なにテキトーに描いてくれちゃってんの」
先にエナメル塗料の水色でドライブラシ(色を筆につけてティッシュでガサガサにして塗料を塗りつけるという塗装方法)で牛以外のイヤリングのベースの色を塗ります。塗った後はラッカー系のクリアーでコートします。
次に牛のレリーフを「ベル牛ブラウン」と「ホワイト」で筆塗ります。
仕上げにエナメル塗料でスミ入れ(塗料をシャバシャバに溶いて溝に毛細管現象を利用して塗料を流し込む塗装方法)をします。
先ほどエナメル塗料でベースを塗った後にラッカー系のクリアーでコートした理由が同じエナメル系の塗料でスミ入れをしたときにドライブラシで塗ったベースを侵さない為だったのです。
べ「な、なんだってー(棒読み)」
ここまできたら全てのマスキングを剥がしてイヤリングと同じようにスミ入れをします。
仕上げにラッカーの「クリアー(半ツヤ)」を全体に塗って完成です!
なにげに今回の影の功労者は割り箸でした。
べ「はいお疲れ。ところで量産するわけでもないのになんで面倒な複製までしたの?」
それはみんなが疑問に思っていることだと思います。その質問に答える前にこちらの写真を見てもらいたいと思います。
べ「あー、キーホルダーにするためだったのね」
そうです。まずベル牛をアクセサリーとして常に持ち歩きたいと思いこのフィギュアを作ったのです。そのためにはファンドの強度では安心できないのでレジンに素材を置き換えることが必要だったのです。これなら後付のイヤリングも本体と一体となって強くなったというわけです。
べ「ところで使ってもいないポリパテが材料にあるけど?」
実は完成してキーホルダーにするときヒートンを刺してそこにリングを通すのですが、そのリングが思ったより硬くて力を入れたらヤットコが滑ってベル牛の鼻に直撃しました。そしたら見事にそこが欠けてしまいその修正のためにポリパテを使用しました。しかも2次災害で修正したとこの塗料が他に飛んで結局ほぼ塗りなおしになりました。修正過程も面白いと思いますがそれも写真撮ってないです。
べ「面白そうだけどテンパってたし半泣きでやってたから無理だったね」
べ「というわけで今回のベル牛フィギュア制作はここで終了とさせていただきます。長くなってしまいましたが最後まで見てくれた方ありがとうございました。詳しく説明されているところと浅い説明の差が激しい内容になってしまいましたが、作りはじめから完成までの流れをわかっていただけたら幸いです。あれ・・・だれか来たみたいだな。こんな夜中に誰だろう?」
「こんばんわ!著作権協会の者です!!」
参考資料
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